東京高等裁判所 昭和28年(く)109号 決定
抗告申立人の抗告の要旨は、抗告申立人に対し昭和二十八年十月十二日東京地方裁判所がなした再審請求棄却決定の理由とするところは、抗告人の再審請求趣意書には原判決の謄本を添附しただけで、何等証拠書類及び証拠物を添えないから、本件請求は法律上の方式に違反する不適法のものであり、これを棄却するというにあるが、右請求書は抗告申立人が在監者であるところから在監者の作成する請求書としては最上の方式を具備せしめたもので、証拠並びに証人について必要な事項を明記したのみでなく、証拠物はこれを添附しえない理由及びこれに代るべき疏明方法をも明記し、在監者作成の再審請求書としては間然するところがない。仮りに不完全な点ありとすれば前に提出した証拠保全請求に関する伺書に何の回答もしない原審にその責任がある。その上、原審のなした刑事訴訟規則第二百八十六条による請求人に対する意見の聴取手続は其の対象を明記しなかつた点に於て違法であるから、却つて原決定は方式に反し不正義で無効であるから抗告するというにある。
よつて調査するに、抗告申立人の再審請求の要旨は、請求人は、公職選挙法違反被告事件について、昭和二十七年十二月十一日東京地方裁判所において有罪判決の言渡を受け、該判決は確定するに至つた。しかし、右判決は請求人が昭和二十七年九月二十一日請求人自ら最高委員長であつた国家社会主義労働党の実力行使機関である反米ゲリラ隊により米国大使館に反米実力行使を敢行した際マフイー当時米国大使を通じ米国大統領に到達せしめんとして文書を撒布したことを以て違反に問うたものであるが、右は、まさに日本警察当局等日本官僚の米国「ヘツライ」主義に由来するものである。即ち、前記文書の撒布は請求人が従来行い来つた反米闘争を繰り返したに過ぎず、特に選挙に際し、公職選挙法第百四十二条の禁止を免かれようとして為したものではなく、又特定のマフイー当時米国大使を対象とはしたが、不特定多数の通行人を対象としたものではない。よつて、本件につきその本質を究明されたく、然るときは、罪原判決より軽いと思われるので、ここに刑事訴訟法第四百三十五条第六号に基ずき再審を求める為本請求に及んだというに在つて、原判決に於て認めた罪より軽いと認められるべき新な証拠として(1)昭和二十七年十月一日施行の衆議院議員総選挙に於ける公職選挙法第百四十二条第百四十三条所定の通常葉書一万枚及ポスター二千枚の残存物、(2)同年同月十五日施行の東京都教育委員会委員選挙に於ける前同法条所定の通常葉書一万枚及ポスター二千枚の残存物を初め以下被告人(再審請求人)の行動は前掲選挙のためでなく、専ら国家社会主義労働党の実力行使機関である反米ゲリラ隊による米国大使館に対する反米実力行使のためであるとし、其の証拠として各種目を掲げ、証人等を列記して居るのである。
而して昭和二十八年十月十二日原裁判所に於て本件請求は前記の如く法律上の方式に違反する不適法のものとして棄却したことは記録により明かである。
しかし、抗告申立人が在監者であるという事実を参酌しても、其の再審請求書に掲ぐる証拠の悉くが、必ずしも、請求人に於てこれを本件再審請求書に添附することができないものとは思われないし、且又刑事訴訟規則第二百八十三条の適用を排除するに足る法律上の正当性ある理由を認め難い。従つて原決定は相当であつて所論の如き取消事由はない。